【模刻-20】東京国立博物館 天王立像

鈴木篤 制作年 2007年

 原本像は平安時代中頃(10世紀末~11世紀)の制作と推定される像です。本体から岩座までを縦1材から彫り出す一木造で、カツラ材が用いられています。実物と同様な構造で模刻するためには、カツラの大径木が必要であり、一般的なルートでの入手は困難でした。そのため、本研究では、東京大学大学院森林利用学研究室の酒井秀夫先生や同大学北海道演習林の犬飼浩先生のご協力を得て、カツラ材を立ち木の状態から選定し、貴重な大径木を入手することができました。

 模刻像の制作過程では、製材直後からあっという間に干割れが生じました。しかし、背刳りを施した後は、原本像と同じように模刻像の背面中央部にもほぼ同じ位置に最大幅の地割れが現れ、以降はその他の干割れは進行していません。ここから、原本像も模刻像と同様に、未乾燥状態の芯を含んだ材を用いて背刳りを行い、半ば人工的に背面に干割れを起こし、像正面が割れてしまうのを防いでいると考えられました。背刳や内刳を制作工程のどの段階で行うかは美術史の謎でしたが、鈴木篤の研究によって、原木の乾燥を待たずに、かなり早い時点で行われていた可能性が実証されました。生き物である木材と、仏師がどのように向き合っていたかを知ることができる作例です。

​伐採したカツラ材

​カツラ材(立木)

​粗彫り​

​背刳り

​中彫り

​原本像の干割れ​

模刻像の干割れ​

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