【模刻-23】岩手県 天台寺聖観音菩薩立像(縮模)

中村志野 制作年 2013年

 原本像は「桂泉観音」として知られる像で、いわゆる「鉈彫」の基準作例でもあります。鉈彫とは、像の表面に丸鑿の彫り跡を大胆につけた像のことで、平安時代の中頃から鎌倉時代にかけて多く制作されました。これが未完成状態を示すものなのか、それとも表現手法なのか、そうだとすれば何をあらわしたものなのか、様々な説が唱えられてきました。しかし本像に関して言えば、背面が平彫りで、正面と側面のみに丸鑿跡が残ることから、いったんすべてを平彫りで彫刻したあと、丸鑿で整然と鑿目を彫った可能性が高いと見られ、最終的な仕上げの表現であると考えられます。また、天台寺には本像と酷似した十一面観音菩薩像が安置されており、同じ時代に造られたとみられますがこちらには丸鑿跡は残されていません。久野健氏は、両像を同じ作者が彫ったものと推測し、鉈彫像は何らかの特異な性格を持ったものであると指摘しています。

 模刻像は、原本像と同じくカツラ材を使用し、60%の縮尺で制作しています。原本像は木芯を含んだ背刳なしの一木造であるにも関わらず、背面に大きな干割れ以外、割れはほとんどありません。これは、丸太の状態であらかじめ背割りし、干割れをそこへ逃したためと思われます。また、本像は用材に対して像を前傾させることで、顔に干割れが走らないように工夫されています。

​天台寺の境内​

​鋸入れ

​小造り

​カツラ材​

​粗彫り

​鑿目を入れる

本展に掲載されているすべての画像および情報は、東京藝術大学文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室および制作担当者の著作物であるとともに原本所有者の著作隣接権によって第三者の利用が厳しく制限されています。無断での複製・改変や利用は固くお断りいたします。

©2020 by 東京藝術大学大学院 美術研究科

文化財保存学専攻 保存修復彫刻研究室