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個人蔵大随求菩薩像の修復

はじめに

 大随求菩薩は、密教における菩薩の一尊です。有名なものでは、清水寺の髄求堂に、この尊が秘仏として祀られています。このたび、「先代より大切に受け継がれた大随求菩薩を綺麗にして大事に保管していきたい」とのご依頼をいただきました。制作されたのは江戸時代とみられ、鮮やかかつ細やかな彩色、精緻な荘厳、そしてかわいらしいお顔が目を引く美しい御像です。今回はクリーニングを中心に修復を行いました。

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主な修復担当者

飯沼春子(非常勤講師)

白澤陽治(非常勤講師)

王 夢石(技術職員)

​胥 文君(2019年度技術職員)

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修理前写真

 厨子、大随求菩薩像及び両脇侍ともに、黒褐色の汚れが付着していました。主に御像は、文化財修復用の吸着ゴムを用いて黒ずんでいた汚れを徐々に取り除きました。また鼻の両脇が欠損していたため、胡粉で補彩を施しました。また、ところどころに黒い斑点のような染みがあったため、御像が傷まないようにエタノールと精製水(1:1)の水溶液で、丁寧に除去いたしました。左腕の剥落箇所は、鹿角の膠で再接着しました。

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吸着ゴムによる汚れの除去

向かって左半分が除去後

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宝冠金具の取り外し

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胡粉による補彩

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小鼻の亀裂

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補彩

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左腕の剥落箇所

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剥落止め後

 厨子に付着した油分の多い汚れは、重曹水を用いた湿式クリーニングを施しました。重曹水が厨子に残らないよう、エタノールと精製水の(1:1)の水溶液で、何度もクリーニングを行いました。

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湿式クリーニング前

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湿式クリーニング中

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クリーニング後

 両脇侍の宝冠は、欠損している箇所が多く、残っている宝冠の残痕から復元を試み、お像の尊容を損なわないように、制作し取り付けました。徐々に綺麗にクリーニングされ、所有者さまへの途中報告では、美しくなった厨子とお像のお姿に喜ばれていたご様子に、私たちも安堵と達成感で胸が一杯になりました。

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両脇侍の宝冠金具の復元図案

修復後

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