​模刻による研究

 模刻(もこく)・模造の歴史は古く、ヨーロッパでは、ギリシャ彫刻を模したローマン・コピーが有名です。日本でも、古くは平安時代の仏師が奈良時代の古像を模造したとの文献が残っているほか、現代においても文化庁と公益財団法人美術院国宝修理所によって、国宝の模造事業が継続的に行われています。
 では模刻・模造とは、どのようなことを指すのでしょうか。一般には、「本物によく似せてつくること」を指します。しかし本展に出品されている作品は、研究を目的に造られたもので、imitationやreplica(偽物、複製品)ではなく、reproduction(再生、再現)と英訳されます。つまり、オリジナルの構造や技法、素材までを可能な限り再現し、当時の技を体得することに大きな目的を持つ、いわば再現制作です。
 私たち保存修復彫刻研究室では、透過X線撮影や3次元計測のような科学的手法を用いながら、手仕事で模刻制作を行うことで、古像への理解を深めています。

1/1

東大寺執金剛神立像 模刻 

2019年度​博士後期課程3年 重松優志

東大寺法華堂に祀られ、年に1日だけ開扉される奈良時代の傑作です。「古典塑造」とよばれる技法やその構造の解明に挑みました。

2019年度修士課程2年 朱若麟

木心に木屎漆(漆のパテ)を盛り付けて造る「木心乾漆造」。奈良時代に隆盛した技法ですが、その後ほとんど造られなくなりました。2mを超える像の再現を試みました。

平等院雲中供養菩薩 模刻 

2019年度修士課程2年 中村美緒

寄木造を完成したとされる仏師・定朝の確かな作例とされる、平安時代彫刻の傑作の1つです。阿弥陀如来のまわりに浮かぶ、その美しさの再現に挑戦しました。

ボストン美術館八幡神像 模刻 

2019年度修士課程2年 小林百代

​明治時代、たくさんの日本の文化財が海外に渡りました。本像もそのうちの1つで、もともと興福寺に安置されていたと言われています。再現に挑みながら、現地での公開制作も行いました。

室生寺十一面観音菩薩 模刻 

​株式会社静岡銀行 賛助研究

​山田亜紀・飯沼春子・王夢石

女人高野として古来から著名な室生寺。多くの美しい御像がお祀りされていますが、研究賛助を頂き、金堂十一面観音菩薩様の縮尺模刻制作が叶いました。

本展に掲載されているすべての画像および情報は、東京藝術大学文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室および制作担当者の著作物であるとともに原本所有者の著作隣接権によって第三者の利用が厳しく制限されています。無断での複製・改変や利用は固くお断りいたします。

©2020 by 東京藝術大学大学院 美術研究科

文化財保存学専攻 保存修復彫刻研究室