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雨引山楽法寺金剛力士立像(阿形)の修復

主な修復担当者

鈴木 篤(非常勤講師)

益田芳樹(非常勤講師)

小島久典(助教)

はじめに

 雨引山楽法寺は、筑波山の麓に位置する歴史あるお寺です。山号の「雨引」は、日照りが続き人々が苦しんでいたとき、雨乞いに功があったことで嵯峨天皇よりいただいたものと言われています。金剛力士像(仁王像)は、楽法寺の仁王門にお祀りされている像で、茨城県桜川市の文化財に指定されています。

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1「納入品と像の位置付けについて」

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2,「​構造技法について」

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3,「修復について」

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​楽法寺の境内

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仁王門

 研究室では、平成30年度から仁王像の修理を続けており、現在、完成までもう少しのところまできています。今年度は阿形像を中心にご報告します。

 阿形像は、吽形像に比べ表面的にはあまり虫食いが進んでいないため、修復者としては安心していました。けれども作業を進めてみると、思いのほか修復に手間取る傷み方をしていました。像内から見つかった修理銘札には、永正年間(1510年代)に大蔵さんと宗延さんという方が修理をおこなったとの記録があります。さぞお二人も苦労をされたのだなと痛感しながら、私たちは令和の修理を行なっています。

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​修復前の阿形像

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​搬出の様子

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後補塗膜の除去

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室町時代の足回りの修理

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部材の隙間を埋める作業

 今回の修復では、大蔵さん達が修理して補った部材を、ちょうど世代交代するように新しい部材に取り換えました。その甲斐あってか、なんとこの仁王様、支えなしで自立することができるのです。だからと言って、もちろんそのままではなく、完成時には仁王様の台座である岩座を完成させ、その上に末永くお立ちいただく方針です。完成時には阿形吽形両像そろい踏みでお披露目の予定です。その折には皆さま是非ご覧ください。

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修復前写真

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阿形像の現在の様子

 像内からは、木札以外にもたくさんの納入品が見つかりました。それによると、仁王像の修理にはたくさんの人が関わり、中心となったのは近江国(現在の滋賀県)の徳賢さんという方だったことがわかります。そのほか、濃州(岐阜県)や上州(群馬県)から「坂東三十三箇所」に人々が巡礼に訪れていたことが分かる木札や、摺仏(仏像を描いた版画)、六十六部と呼ばれる法華経も見つかりました。現在、これらの納入品は茨城県内の専門家が修復を行っています。

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納入品発見時の様子

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修理銘札 おもて

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修理銘札 うら

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​巡礼札

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​摺仏

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六十六部(法華経)

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五色の糸を慎重にほどく

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「大永三年」「等蔵」の名が見える

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​紙と紙の継ぎ手をつなぎ直す

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​固く巻かれた巻子​

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紙を破らないようにゆっくりと開く

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裏面から光をあてながらの作業

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なお、昨年発表した吽形像は、阿形像とバランスをとりながら進めながら修復を続けています。現在は、御像をしっかりと支えるための岩座や框の制作を行なっています。

吽形像(平成31年春の時点)

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