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某八幡社 三神像の修復

はじめに

 この御像は、男神像1軀、女神像2軀の形式で、それぞれの姿は僧侶の姿、古代の女性の姿であらわされています。このような形式は平安時代から存在しており、本像も平安後期から鎌倉時代頃に制作されたとみられます。

 長い年月の中で、像全体が虫に喰われてしまってはいますが、森厳かつ圧倒的な存在感をまとった大変美しい御像です。

​主な修復担当者

白澤陽治(非常勤講師)

山田亜紀(教育研究助手)

胥 文君(2019年度技術職員)

​※通常は決して人目に触れることのない御神像のため、お祀りされている尊名、所蔵者様のお名前は非公開としています。​

​修復前写真

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女神像イ(像高54cm)

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男神像(像高51cm)

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女神像ロ(像高52cm)

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 本三神像に使われている木材は、樹種同定の結果ヒノキと判定されました。ヒノキは当時の木彫像の材としては一般的なものです。しかし、いずれの像にも、彫刻には不向きな木芯や大きな節があり、特に女神像ロには内部が焦げたような痕跡もあります。これは、いわゆる御神木や霊木から彫り出された像であることを示唆しており、霹靂木(落雷を受けた木)を用いている可能性も考えられます。

 本像は、お預かりするまでの長い年月、依り代としてお祀りされていましたが、虫食いの被害により大変脆くなっており、現状のままでは木が崩れ落ちそうな状態であったため早急な対応が必要でした。そのため本三神像は、平成29年から令和2年にかけて、当研究室で修復を行っています。

女神像ロの前面部材を取り外したところ

​焦げたような跡や大きな節が見える

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男神像 脚部の朽損

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女神像イ 像底の朽損

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女神像ロ 像底の朽損

 修復処置は、虫食がこれ以上進まないように殺虫するための処置(燻蒸処置)や、クリーニングを行った後、表面と内部を強化しました。このとき、強化剤で濡れ色になるなど、御像の見た目を変えないように細心の注意を払いました。しかし、構造上どうしても強化が必要な部分には、ヒノキ材での補作や木屎漆での充填を行いました。

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​燻蒸(施工:イカリ消毒株式会社)

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湿式クリーニング

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​表面の強化

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​虫食い部分を内部から強化する

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​ヒノキ材による補作

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像底構造強化のための充填前

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像底構造強化のための充填後

 さらに、像底は経年変化による木の歪みがでており、非常に不安定な状態でした。そこでより安全にお祀りできるよう、像底にフィットするマチ材と、漆塗りの框を制作しています。

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​制作中の框

御像と​框とのバランス確認​

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女神像イ

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女神像イ(斜光)

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女神像ロ

 女神像イとロは、像高こそ近いものですが、その作風は異なります。女神像ロはより若い雰囲気で表現されており、女神像イは光の当て方を変えると、実は大変厳しい表情であることが分かります。いっぽう、造られた時期は、女神像ロの方がやや古いとみられます。なお、男神像の顔の墨線や両手先は、後の時代に加えられたものと推定されます。

修復完成写真

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